日々-41

 

とある7日間の日記。

 

8.-----

胴長を着る。どこからともなく水分が溢れ出てくる不思議。これが汗というものか。やったことのない仕事では、想像もできない作業に出会える。
昼からは研修会だった。職場は同世代が多いということもあって、たまに、大学のゼミ合宿みたいな空気が流れる。あり得たかもしれない和やかな時代を巻き戻している感じ。なんだか錯覚を起こしてしまいそう。

 

9.-----

台風の影響で休みになった。島には遮るものがないのか、周りが静かなのか、どういう仕組みかわからないけれど、風の音が大きすぎる。ゴオォと聴いたことがない音。風の輪郭が目に見えそうなくらい存在感がある。怖いのでだらりと台風を嗜むことにした。つまり、寝た。

 

10.-----
最近、今まで苦手だった本の並行読みができるようになった。1日にいろんな人と会話するような感覚。そこここでどれも完結するしどれも続くことに気付いて、なんだか、少し自由になった気がする。
ここでは、できなかったことが自然とできるようになっている。逆にできないことも見えてくるけれど、できるときにはできるのだ。そして実はできなくてもいい。人生は長いかもしれない。短いかもしれない。けれど、長い目で見て、やっぱりおもしろい。

 

11.-----

今、夕陽がいちばんきれいに見える場所を見つけたかもしれない。うれしい。こんな道があったなんて。夏休みの冒険気分である。夏だ。

 

12.-----

突然、過去の経験が活きていると感じて、なるほど私のルーツはあの辺なのかと気付く。過去の職場が仕事の基準みたいに思ってしまう癖が抜けない。でも、楽しかったからこそ、やっぱり楽しいがそこにあるなら、求めればいいのだと思う。わたしは仕事が嫌いではないらしい。仕事をしなくて暮らせるなら万々歳だと思うのに、どうも、仕事の先にあるものに憧れている。

 

13.-----

島の夏祭り。普段の生活では見ないほどの人が集まっていて、びっくりする。屋台があって、出し物があって、盆踊りの輪があって。生演奏のライブがあって、言葉にできないあの空気があって、はっとした。こ、これです、わたしがなにより好きなもの。
お祭りのフィナーレ、両手を広げてもあまるくらい大きな花火を見た。こんなに美しいものを見せてもらっていいのだろうか。生きているって、すばらしい。

 

14.-----

朝には、昨日のお祭り楽しかったね、とお店で話し、夕方には、明日は台風だねと話す。祭りの後の静けさと嵐の前の静けさと。
台風の影響で、明日の船が全便欠航との報せがくる。ついに島に閉じ込められた。明日を逃したらしばらく買い出しに行けないのに!と、狼狽えかけたが、同時にこの状況を面白がっている自分がいる。わたしのアドベンチャー魂は燃え尽きていなかった。この火を絶やさない。そして自らヤケドしない。

 

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