自分の立つ場所は自分で決める

本を買った。


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誰もいない場所を探している(ミルブックス)

 

徳島でコーヒー屋(アアルトコーヒー・14g)を営む庄野雄治さんのエッセイ。

あえて素っ気なく紹介するならば、会社員をやめて1から自家焙煎の珈琲屋を開店して成功した人。なんて私はすぐ歪んだ見方をして、なんだよ自慢話なんていいよ、って思う時もあるけれど、この本は全然そうじゃなかった。

表紙の色合いが好きだなと思ってページをめくると、目次の言葉にとても惹かれた。意外だった。「あれ?この人、多分強くない」と思った。強くないっていうのは、なんていうか、成功者として名をはせるタイプの人じゃない、というか。

ご本人が自称されているように、「凡人」ってことだ。


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ゆるやかで等身大の言葉がつづられている。

「何かを始めたい」という人に向けて書かれてはいるけれど、これをやればいい、とか、これはだめだ、とか、わかりやすいアドバイスみたいなものを押し付けてこない。

お店づくりに正解もなければ、成功の形も人によって様々だから。

この本にある、著者のアイデアや小さなアドバイスは、風に乗ってそっと運ばれていきそうな軽やかさがある言葉だ。でも、必要な人に届いた時には、急にずしんと心に響くような、そんな言葉だと思う。


著者の生活はとても魅力的だと思った。自分とその回りのおだやかな幸せのための生き方をしている人だと思う。

さっき、強くないと書いたけれど、本当はこういう人こそ強い人だと思う。周りと自分を笑顔にできる人は強い人。なぜなら、たくさんたくさんもがいているから。それでも、笑っているから。

 

そこでまたひがんだ自分が出てきて、「とはいえ、本当になんにもない本当の凡人にとっては、成功者すぎてまぶしい存在だよな……」と思ってしまうのだけど、そうじゃないはず。

独立するだとか、お店を作るだとか、もちろんそれはすごく立派なこと。でも、それだけじゃなくて、その人にとっての幸せな生き方を見つけられていることがすごいんだと思う。だから、それぞれ自分の場所を見つけていく勇気が必要なんだと思った。会社でもいい、地元でも海外でもいい、どこかに自分を必要としてくれる人がいる。凡人って言葉も本当はおかしいのかも。誰が決めたんだよって話だ。

そう探しているうちに、自分はどうしても会社員じゃないな、何か始めたい、お店でもやりたいなって思った時、この本がまた誰かの背中を押すんだと思う。

夢や希望がなくたって、楽しく幸せに暮らしていけるんだ。「自分らしく」なんて言葉に惑わされずに生きていって欲しい。とにかく、一生懸命やっていれば何とかなる。それだけで大丈夫だよ。(p.9はじめに より)

 

読み終わって、最後の著者紹介のところを開いたら見覚えのある本の名前が。

コーヒーの絵本(ミルブックス)。おんなじ人だったんだ。

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かわいくて、ちゃんとコーヒーのこともわかって、ほっこりする絵本。

書いた人は、コーヒーのこと、コーヒーのある生活が好きな人なんだろうなと思っていたけど、納得した。やっぱりそうだと思う。

いつか徳島でアアルトコーヒーを飲みたい。