香川県旅行記〜1日目編〜

 

旅の時は浮かれた服を着ると決めている。
今日の服はうどんのイラストにKAGAWAとプリントされたTシャツ1枚。そう、行き先は香川県

思いつきで里帰りしていたので旅の記録。

制服と白シャツに囲まれるいつもの通勤電車に乗る。途端に、私どうして行き先の描かれた服を着てるんだ、と少し恥ずかしくなった。でも、冷静に考えよう。皆学校に行くから制服を着ている、つまり服の目的は同じだ。TPOに合わせた服を着るというのは、行き先を身にまとうということでもある。じゃあ、骸骨の服を着ている人も自らの行く末を身にまとっているのだろうか、なんてつまらないことを考えはじめると旅が始まった合図である。

 

特急列車の自由席に乗っておにぎりを食べた。しばらくぼーっとしていると、どこからともなくシンナーのような匂いが。え、これはヤバイ電車に乗ってしまったのか、と焦って周りを見渡すと、後ろの人が足にマニキュアを塗っていた。あんさん、確かにここは自由席やけどもな、自由を履き違えてはいないかい。と言うのもめんどくさいので、車両を変えた。

 

岡山で乗り換え。マリンライナーが好きすぎる。突然瀬戸内のキラキラした海が見えるとき、旅〜って思う。補助椅子に座ってドアの窓から眺める。いい時間。

周りの席は日除けのブラインドが降りていた。こんなにきれいな景色でも、日常なら気になるのは、眩しさや紫外線なのだろうか。そういえば、日焼け止め塗るの忘れたなと思った。

 

最初の目的地は、丸亀。早速うどん屋探しに出た。一軒目はかなり並んでいたのでまた今度にして、少し歩いて腹ごしらえをした。ぶっかけのハーフと長芋天。

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商店街を歩いていると、いろんな味の苺大福を売っているお菓子屋さんがあった。入ってみると、少しアンニュイな感じのマダムが出てきてくれた。15か20種類はあったと思う。普段の私なら一番ストレンジなのを選ぶし、お店の人に聞いたりするのに、なぜか「白あんの苺大福ひとつください」と言ってしまった。店を出てから、自分の調子悪さにわらけた。

最近ずっと調子が悪かった。体調は悪くないのに、いろんな動きが鈍い。頭の回転も遅い。何かにずっと邪魔をされてるみたいな。まあ臆病なだけだろう。
苺大福は、とても美味しかった。

 

目的地、丸亀市猪熊弦一郎美術館。以前来たときの印象がよくてまたやってきた。
企画展は、今井俊介氏「スカートと風景」。

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色使いの眩しさと、平面なのに立体を感じる不思議さと、どんなふうに何が重なっているのか、とか、切り取られているのか、とか、風景なのか作品なのかとか、とかとか。ようわからんなと思いながら眺めてるのがめちゃくちゃ楽しい。

カンバスに描かれた作品と布が主だったけど、「色の洪水」という映像インスタレーションもあって、いろんな色のストライプの布が音もなく動いたり消えたり迫ってきたりする気味悪い映像がとても良かった。動きの効果にわくわくした。

猪熊氏の作品はもとより、いつもキュンとしてしまうのが彼のコレクションの石ころやちっさな動物の民芸品みたいもの。とてもかわいい。猪熊氏は「美術館は心の病院」という考え方をしていたそうで、美術館の器としてのあり方に憧れた。 

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さて、高松に移動し、歩いて香川県ミュージアムに向かう。

瀬戸内芸術祭の特別展「せとうちの大気」へ。なんの縁もないのに勝手に私が心のふるさとにしているほど好きな瀬戸内。それがテーマの展示ってどんなんだろうと気になってやってきた。

いろんな切り口の作品があった。海、島々、音、景色、歴史、人、時間、生死。そんなこと考えたことなかった、とか、予想以上のこととか、予想できてもそんな表現をするのか、とかとかを感じておもしろかった。現代アートは静かに振り回されて楽しい。
過疎化の進む島々にまつわるインスタレーションで、古いレコードプレーヤーにザラザラした砂のレコード盤みたいなものが回っていてノイズが出ている作品にぎょっとした。海を見て彼岸と此岸を連想する人間の想像力とその限界にしばらく頭が取り憑かれてしまった。

 

閉館の音楽に焦りながら、展示を見終えて小休止。高松市の美術館に行くつもりだったけれど、ゆっくり観たいので明日にする。周辺を検索すると少し歩いたらうどん屋さんがあるらしい。いいなあこの環境。うどんって、ちょっと力抜けるのがええんよな。うどんうどん。

高松に来たらどんな気分でもストイックにぶっかけを食べていたけれど、どうしてもカレーうどんが食べたくなって、初めて頼んでみた。

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ぶっかけの方がよかったかもしれない。

 

食べ終わって6時前。夕焼けでも見るか、と思って海の方まで歩いた。

もう今日は充分歩いて疲れたけれど、こういうときはいくらでも歩けてしまうから不思議だ。
景色が開けた場所に来るとやっぱり気持ちがいい。遠くに島が見えて、心地よい風も吹いている。さざなみが綺麗だと思ったのは初めてだった。
雲の間から漏れている夕陽の美しさったらない。スマホの写真では残せないけれど、別にいい。
水面に反射する光を眺める。日が暮れてぼんやり光が薄れてくる頃、遠くの島々にポツポツと灯りがつき始めた。ああ、あそこは人が住んでいる島だったんだと思った。

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宿でゆったりして、お風呂に入って、だらだらとした。
元気な状態でホテルに泊まるのはやっぱりいい。宿泊療養は心身がとてもしんどかった。そういえば、あの頃をきっかけに調子を悪くしていた気もする。禍は過ぎ去ってはいないのだけど、今自分は元気なはずだ。何を引きずっているんだろう。えいえい!悪霊退散!なんてね。

 

夜は、なんだか見たことないタイプの夢をみた。でもなんにも覚えていないという。久しぶりにいろんなものを見て、脳もびっくりしたらしい。

夢という言葉、睡眠中にみる映像みたいなものと、将来実現したい物事のこと、どちらも夢という言葉を使うのはどうしてなんだろう。見たいものを見てるのか、見てるだけでいいのか、なんてことをふと考えかけて、もう一度寝た。

 

1日目おわり。